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クローバーの独り言

新.三.銃.士の感想とかお話もどきを気儘に書き綴ってます。 Copyright ? 2010- Koufuu Biyori All rights reserved.

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書き掛け途中 アラミス&小僧 最終回

まだ書き上げていない話(第25話芽生え)もあるというのに、ちょっと横道に逸れてます(汗)
覚書代わりに、ちょこっとUP中。

※3月10日少しだけ追加更新

「・・・・・・動かないんですか?」

微妙にささくれ立った声が部屋に沈んだ。

「何が?」

声の主を見ようともせず、ゆっくりとページを捲る指先に少しの動揺も見当たらない。
いや、動揺を決して見せまいと心の内で懸命に堪えていると言った方が正しいか。

「とぼけないで下さいよ。僕が問い質している本当の意味を知っていて、アラミスさんが敢えて黙り込もうとしている位、軽く見当がつきます」

「言っている意味が分からないのだが」

突き放そうとするアラミスだったが、それは徒労に終った。
ダルタニアンの口調が強くなり、部屋の中の穏かな空気が一変した。

「誤魔化さないでください。子ども扱いされる時期はとっくに過ぎたと教えてくれたのは、他でもない貴方方じゃないですか!それに・・・・・・」

「それに・・・・・・?」

「愛した気持はそうそう変わるものではない。それを一番よく分かっているのでは、アラミスさん、貴方自身じゃないんですか?」

咄嗟に視線を外そうとしたアラミスを赦さず、ダルタニアンは更に畳み掛ける。
敢えて自らの傷口を広げることが、即ち、コンスタンスを想い出へと変えていく唯一の方法だと知っていたから。

「貴方とコンスタンスが愛し合っていた事は知っていました。戦地から戻った貴方方の間に一体何があったのか、僕は知りません」

紡ぎだす言葉の端々が震え、時間の波を静かに切り崩していく。
アラミスは俯き、黙り込んだまま、ダルタニアンの言うがままに任せた。

「でも、これだけは言わせてください。彼女は・・・・・・コンスタンスは貴方の事を心から慕っていました。アラミスさんが行方不明になっている理由を知ったとき、『あの人らしいわ』と僕に向け話した彼女の眸には、貴方の姿しか写り込んでいなかった。それなのに何故?」

「もうそれは済んだことだ」

一方的に遮断するつもりで放った言葉だったが、逆にそれがダルタニアンの反逆心を煽る結果となった。
かつてアラミスが同じ様な口振りで自分の追及をかわし、結果として決闘することになった経緯を思い返しながら、ダルタニアンはアラミスをじりじりと追い詰めていく。

「アラミスさん、確か貴方は僕に対してコンスタンスとの事をはっきりと伝えようとしていましたよね?それも二度も。一度目は僕に拒否され、二度目はポルトスさんに遮られて、結果的にその機会は失われたままだったけれど」

自分を見据えるダルタニアンの眸に静かな焔が揺らめく。
この先一切の言い逃れも赦さないような意思を持ったその眸に、アラミスは息を呑んだ。
本気で向き合わなければならない予感が自分の身体を包み込むのを感じ、自然と引き締まる口元。

「貴方は僕に蔑まれるのを承知で、彼女との事を僕に話すつもりだった筈です。おそらく自分ひとりが罪を被って彼女には何も罪は無いと言い切るつもりだったのでしょう。そこまでして彼女を・・・・・・コンスタンスを愛していた。そして彼女もまた貴方と同じ気持でいた。哀しいけれど僕が入り込む隙など一切無いくらいに」

「・・・・・・」

「そこまでして愛し合っている人間同士なのに何故?彼女は・・・・・・コンスタンスは貴方の事を待っているに違いないんですよ?」

身を乗り出すようにして、熱い口調で訴え続けるダルタニアンから、まだ冷め切らぬ彼女への想いを嗅ぎ取り、アラミスは小さい溜め息を一つ零した。
それはダルタニアンへの反発ではなく、不甲斐ない自分に対して軽侮を込めた類のものであるが故に、胸の内がどんどん澱んでいくのを止められなくなる。
溜め息の中に詰め込まれていたのは、コンスタンスへの諦め切れぬ慕情と、行方を見失ったままの心。
前へ踏み出す勇気も、忘れ去る努力も中途半端のままの自分に、現実は容赦なく襲い掛かる。
血を吐くような想いで自分の気持を吐露しているはずの、ダルタニアンの気持も携えて。
薄っすらと顔から血の気が引いていくのを感じながら、アラミスは呻くようにして言葉を搾り出した。
焦点の定まらない眸が、彼の想いそのままを表しているようで。

「・・・・・・どうしようも出来ないのなら、こんなにも悩みはしない」

震える声に隠された感情が、溢れ出る先を求めて哀しげに流離い続ける。
極限ギリギリまで堪え続けている感情は、昂ぶっている気配など微塵も見せずに、淡々と零れ落ちていく。
逆にそれだけ冷静でいられるアラミスの様子が、却って彼の深い悲しみと遣る瀬無い思いに満ち溢れているようで、ダルタニアンは言葉を失った。

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