クローバーの独り言
新.三.銃.士の感想とかお話もどきを気儘に書き綴ってます。 Copyright ? 2010- Koufuu Biyori All rights reserved.
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コラボ作品 リラの花咲く季節
7月9日
いつもチャットで楽しくお話させていただいている
渡神さまより、イラストを送っていただきました!
何と言うかもう・・・イラストから可愛らしさが
溢れ出ているようなコンスタンスです!
こんな笑顔を向けられたら、
きっとイチコロだったことでしょう>アラミス先生!
渡神さま、本当にありがとうございました!
*****
ちょっと時期を外してしまいましたが、
アラミスとコンスタンスのお話です。
アラミスをあまりにも天然にし過ぎてしまったので、
格好いい彼をお望みの方には申し訳ない話に
なってますが、よろしかったら下の つづきはこちら からどうぞ
そして拍手のお返事です。
いつもWeb Clapありがとうございます!
本当に励みになっております!!
>かせいさんさま
はじめまして。
この度はお立ち寄りいただき、ありがとうございまいた。
仰るようにアラコンのふたりはお互いが必要不可欠ですよね。
それを分からないN○Kじゃないと思うんですが・・・・・・
やっぱりいわゆる大人の事情かもしれませんね。
いつもチャットで楽しくお話させていただいている
渡神さまより、イラストを送っていただきました!
何と言うかもう・・・イラストから可愛らしさが
溢れ出ているようなコンスタンスです!
こんな笑顔を向けられたら、
きっとイチコロだったことでしょう>アラミス先生!
渡神さま、本当にありがとうございました!
*****
ちょっと時期を外してしまいましたが、
アラミスとコンスタンスのお話です。
アラミスをあまりにも天然にし過ぎてしまったので、
格好いい彼をお望みの方には申し訳ない話に
なってますが、よろしかったら下の つづきはこちら からどうぞ
そして拍手のお返事です。
いつもWeb Clapありがとうございます!
本当に励みになっております!!
>かせいさんさま
はじめまして。
この度はお立ち寄りいただき、ありがとうございまいた。
仰るようにアラコンのふたりはお互いが必要不可欠ですよね。
それを分からないN○Kじゃないと思うんですが・・・・・・
やっぱりいわゆる大人の事情かもしれませんね。
「うぅ~~~ん、余の頭の中は今、ごちゃ混ぜになっておるぞ」
両手で頭を抱え込んで、苦しそうに訴えるルイの姿を目の当たりにして、
アラミスは彼の気持ちを落ち着かせる為に、ゆっくりと宥めすかす。
小さい幼子が訳が分からぬまま、難しい問題に直面してパニックを引き起こしているような状況を解決する唯一の方法は、根気よく話しかけるのみ。
「畏れながら国王陛下に申し上げます。一気に何もかも覚えようとすると、却って頭が混乱し、せっかく覚えた事柄も忽ち忘れてしまいます。
焦らなくても良いのです。覚えようとする、その気持ちこそが一番大事なのですから」
ルイの前に跪き、一言ずつ丁寧に語り掛けるアラミスの眸は穏やかそのもの。
国王陛下にお仕えするという大義名分とは別に、まだ歳若い国王を取り巻く様々な状況や思惑から、何としてでも守らねばならぬという意識が、彼をそうさせていた。
きっとまだ遊びたい盛りだろうに、一国の国王としての振舞いを要求されなければならぬ事情を知っているが故に、アラミスを初めとする三銃士は真の忠誠を心に誓っているのだった。
「余は難しい話は好きではない。しかし、国民が皆、幸せに暮らせるようになれるのであれば、余は頑張るぞ!だから、ハラミ!これからも色々な事を少しずつでいいから、余に教えてください」
言い切ったルイの眸の気高さに、アラミスはしばし言葉を放つのも忘れて、見入っていた。
そしてその言葉の奥深くに込められた気持ちに触れて、アラミスの心も俄かに沸き立つ。
「かしこまりました、陛下!アラミス、陛下がお望みとあらば、
いつでも陛下のお役に立てるよう、すぐに馳せ参じる所存です!」
「頼りにしてるよ、ハラミッ!・・・さて、勉強はこれ位にして、昨日の続きをしようっと♪」
さっきまでの小難しい顔とは打って変わって、歳相応の無邪気な笑顔が浮かぶ。
その満面の笑顔を見つめながら、アラミスは強く思うのだった。
国王陛下には、あまりくよくよ悩まれず大らかな気持ちで、このまま育っていただきたいものだ。
陛下にはまだまだ未知数の可能性が秘められている筈。
その無限の可能性を引き出すためにも、我々がしなくてはならぬ事はただ一つ。
陛下の成長を妨げようとする数々の思惑から、身を挺して陛下の命と思いを守らねばならぬのだと。
アラミスの脳裏に枢機卿の不敵な笑みが浮かぶ。
このまま、枢機卿の好き勝手にさせてはならない。
思わず握り締めた拳に力が入る。
かつてない程に強い覚悟を秘めたアラミスを後押しするかのように、王宮に射し込む光は眩い煌きを一面に放つのだった。
ルンルンとスキップをしながらご機嫌な様子で部屋を出て行こうとしたルイがふと立ち止まる。
何かを思い出したように、「あ!」と一声上げると、物凄い勢いでアラミスの元に駆け寄り、彼の袖口を強く引っ張り上げながら、大きな素振りで話し掛け始めた。
「ねぇねぇハラミ!勉強を教えてくれた御礼にいいこと教えてあげる!実は今日、王妃から花束をプレゼントされちゃったんだ!王妃が余の為に自分で選び取って、王宮の庭から取ってきてくれたんだ!だからハラミも帰るときに王宮から好きなだけお花を取っていってもいいよ!」
満面の笑みで話しかけるルイに対し、アラミスは戸惑いを隠せない。
王妃が実はルイを結果的に欺くような形でバッキンガム公爵と密会していた事実。
そしてそれを容認するかのように、自分たちが彼らの護衛に関わっていた現実。
ルイが無邪気に王妃を恋い慕う分だけ、その事実の残酷性が露にされていくようでアラミスはしばし言葉を失った。
そしてそんな状況にも関わらず、王妃を一心に慕うルイが哀れでならない。
「いえ、私は・・・」
様々な状況を慮って、口篭るしかないアラミスに対し、ルイはさも嬉しそうに話を続ける。
「遠慮するのは良くないぞ、ハラミ!余はとっても嬉しいのだ」
あまりにも純粋過ぎる眸の眩しさに、アラミスは抗う術を失った。
こんなにも一途に王妃を慕うルイの純情に接し、自分たちがとってきた行動は全てルイの気持ちに反するものであった事に、今更ながら強い後悔が押し寄せる。
大人の狡さで、あの時はああするしかなかったという言い訳すら霞んでしまうようなルイの想いに接し、これ以上ルイを欺き続けるのは良心の呵責に耐え切れなくなりそうで。
しかし、その想いを必死に思い留まらせているのは、全てがルイの為を思ってのこと、それだけに尽きた。
「・・・・・・私ごときがお花をいただいていってもよろしいのでしょうか?」
胸の内の凄まじい葛藤を押し殺して紡ぎだす言葉が掠れる。
こちらの思惑に気付かず、ルイはニコニコしながら答えるのだった。
「もちろん!ハラミが持っていきたいだけ、持っていけばいいよ!余が許す」
「かしこまりました。では遠慮なくいただいていきます」
アラミスの言葉を聞き終えぬうちに、ルイは軽やかなスキップを繰り出しながら再び去っていくのだった。
遠ざかっていく小さい背中を見つめながら、アラミスは小さな溜息を一つ零した。
見事に手入れが行き届いた王宮の庭に足を踏み入れると、日頃の喧騒を一気に忘れさせるような別世界が目の前に広がっていた。
「陛下はああ仰って下さったが・・・・・・さて、どうしたものか」
ポルトスならこういった機会に恵まれたら、それこそ諸手を挙げて大はしゃぎで庭園中を駆けずり回りながら、そこら中の花を片っ端から摘み取っていくのだろうが、花とは無縁の生活を送っていた自分にはどうしたらいいのか皆目見当が付かない。
このまま何もせずに立ち去ろうとした矢先、自分の名を呼ぶ声に気付いた。
「そこにいるのは銃士隊のアラミスではないですか?」
僅かだが剣を含んだ言い回しには、かつて聞き覚えがあった。
「アンヌ王妃。ご機嫌麗しく何よりでございます」
即座にその場に跪き、深々と一礼するアラミスに対し、王妃はいつものごとくマイペースを貫き通す。
「およそ花とは無縁の生活を送っているであろう貴方が、こんな所にいるとはね。珍しいこともあったものだわ」
あっけらかんと言い放つ王妃に、おそらく悪意は無い。
悪意はないが、ストレートに物事を口にする分だけ、相手の気持ちには無頓着なのだろう。
怒るのを通り越して、若干諦めにも似た境地でアラミスは大人の対応で答える。
「私のような者がこの庭に足を踏み入れ、美しい景観を損ねてしまうのであれば即刻立ち去りますゆえ、平に御容赦願います」
一切感情を込めぬまま機械的に繰り出した言葉に対し、アンヌもまた牽制球を投げるのであった。
眼に見えない火花がバチバチと音を立てている感覚が二人の間で沸き起こる。
「逃げるのですか?アラミス!貴方、よっぽど私の事がお嫌いなのね?いえ、随分と前から貴方の態度で薄々気付いてはいましたが」
振り返りざまにカウンターパンチをお見舞いされたような衝撃がアラミスを襲う。
しかしその猛攻に必死に耐え抜いたアラミスもまた、王妃に対し失礼がない程度にジャブを繰り出すのも忘れない。
「どう思われても結構ですが、国王陛下の為に貴女様をお守りする義務が我々にはあります。ただ、陛下のお気持ちを哀しませるような事は慎んでいただきたいと切に願うばかりです」
丁寧な口調に込められた静かな怒りの炎が勢いを増す。
あっさりと言い放つ分だけ、怒りの深さは計り知れない。
「トレヴィルも全く同じ事を私に言い放ちました。長い期間同胞として同じ任務に就いていると、どうやら上の者の考え方が下の者に多大な影響を及ぼすらしいわね。その考え方、貴方方の代で終わりになさい!」
威厳を込め言い放つアンヌに対し、アラミスは一礼したまま強烈な捨て台詞を吐く
「王妃自らそう仰るのは、余程ご自分が引き起こした騒動について深く反省していらっしゃるのだとお見受けしました。今、私に向け放たれた言葉は御自身の首を絞めかねない事も充分承知で仰られた筈。アラミス、お言葉を胸に深く留めました故、どうぞご安心ください。ではこれにて失礼致します」
立ち上がり掛けたアラミスに対し、意外とも思える王妃の言葉が届いた。
「・・・・・さすが陛下をお守りする精鋭銃士隊筆頭の知恵者の言葉だわ。わたくしの負けです。・・・・・アラミス、貴方にひとついい事を教えてあげましょう。コンスタンスはリラとミモザの花が大好きなのよ。わたくしが許すから好きなだけ持っていきなさい。ただし一つだけ約束していただきたい事があるの。わたくしが貴方にコンスタンスの好きな花を教えたことは、絶対に秘密にしてちょうだい」
さっきまでの威圧的な口調とは打って変わり、潔く負けを認めてサバサバした言葉を漏らすアンヌの目元が綻ぶ。
まるで移り変わりの激しい山の天気のような、アンヌ王妃の気持ちの変わり様にアラミスは戸惑いを覚えながらも、感謝の念を表すのだった。
「御配慮感謝申し上げます。・・・・・・しかし、何故コンスタンスに言ってはならぬのですか?」
名立たる策士とは言えども、そのあまりに天然過ぎるアラミスの恋心の自覚の無さに王妃は思わず小さな笑いを漏らす。
「さて、どうしてかしら?御自分の胸に手を当ててよく考えてみたらいかが?」
含みのある言葉を投げ付けながら、王妃は艶やかな立ち居振る舞いでその場から立ち去るのだった。
庭園に残されたアラミスはただひとり、その言葉の意味の真意を紐解こうとフル回転して挑むのであったが、結局答えは見つからずじまいだった。
「ただいま戻りました」
聞き覚えのある優しい声が耳に入った瞬間、コンスタンスは料理をする手を一旦止めて一目散に声の主の元へと駆け寄る。
胸の高まりが急に激しくなるのを押さえ切れそうにない。
「おかえりなさいませ、アラミスさん!」
息を弾ませながら自分の事を出迎えに来たコンスタンスに、アラミスの顔もまた綻ぶ。
「お出迎えありがとう、コンスタンス。・・・・・・実は今日、貴女にプレゼントがあるのです」
そう言いながらずっと後ろ手に抱え込んでいたリラとミモザの花束を、
そっとコンスタンスの目の前に差し出す。
「いつも我々の為に、色々とお気遣いしていただき感謝の念に堪えません!ほんのささやかな気持ちですが、よろしかったら受け取っていただけないだろうか?」
「!・・・・・これを・・・・・・私に?」
「当然です!貴女以外に誰にプレゼントしようとするのです?」
アラミスの言葉を聞き終えないうちに、コンスタンスの眸から大きな雫がポタポタと零れだし始めて、可憐な花弁を濡らす。
その様子を見ていたアラミスは突然泣き出したコンスタンスの姿を見て、
激しく狼狽する。
「もしかして、貴女のお気に触るようなことをしてしまいましたか?
だとしたら申し訳ない!すぐさまこの花束を戻してきます!」
慌てふためいて、立ち去ろうとするアラミスをコンスタンスは必死に押し留める。
「違うんです、アラミスさん!誤解しないでっっっ!私とっても嬉しくて泣いてしまったんです。本当に嬉しいから涙が止まらなくて」
言いながらも後から後から涙を零し続けるコンスタンスに、アラミスの天然ボケが炸裂する。
見事なボケの極致は、アトスやポルトスが聞いたらその場で失神してしまいかねないレベルの凄まじさであった。
「私には分からない。お花をもらっただけで、女性はこんなにも嬉しがるものなのですか?帰って来る途中で何度も見掛けましたが、そこらじゅうに咲き綻んでいる、ありきたりの花ですよ?」
この言葉をポルトスが聞いていたとしたら、即座に殴りかかっても可笑しくない位の爆発的な破壊力であった。
真面目一辺倒の男が織り成す天然ボケは、ある意味彼の真骨頂とも言えた。
惚れ惚れする位の美形で、男からも嫉妬されかねない艶やかで洗練された立ち居振る舞い。
教養と知性を併せ持ち、尚且つ理性的で奥床しい語り口は、世の男性全員が逆立ちしても追いつけないほど、他の追随を許さずにいた。
その男がよりによって、恋愛面に関して凄まじい天然ボケを次々と繰り出すとは神の悪戯にしか思えない程であった。
「アラミスさんの目にはきっとそう映るのでしょう。でも私にとって、このお花たちは何よりも大切なものなのです」
「何故そんなに嬉しがるのですか?私にはさっぱり分からない」
腕組みをして、小難しい表情を浮かべながら一心不乱に考え込むアラミスを見ているうちにコンスタンスの心も次第に落ち着きを取り戻していく。
匂い立つようなリラとミモザの花束に囲まれながら、コンスタンスは極上の笑みを
浮かべつつアラミスに語りかけるのだった。
「このお花達は、私がとっても好きなお花なんです。・・・・・・そして私にそれをプレゼントして下さったのが、他の誰でもないアラミスさんだって事が・・・・・・一番嬉しかったんです」
まるで可憐な妖精がこの場に舞い降りて、コンスタンスに乗り移ったかのような清らかで愛らしい表情を認めた途端、アラミスの心に鋭い衝撃が走った。
息が詰まって呼吸できなくなるような感覚が身体を襲い、激しい胸の高鳴りが抑えきれなくなりそうで。
「ありがとう、アラミスさん。私、今日の事・・・・・・一生忘れません」
コンスタンスの呟きが、何故か胸を離れないアラミスなのであった。
***後日、ほんの戯れに、リラとミモザの花言葉をポルトスからこっそりと聞き出したアラミスは胸の高鳴りが更に抑えきれなくなるのだった***
リラ:「愛の芽生え」「初恋」
ミモザ:「秘めた恋」「プラトニックな愛」
花言葉の意味はkababonさんに教えて頂きました。
ありがとうございました!
両手で頭を抱え込んで、苦しそうに訴えるルイの姿を目の当たりにして、
アラミスは彼の気持ちを落ち着かせる為に、ゆっくりと宥めすかす。
小さい幼子が訳が分からぬまま、難しい問題に直面してパニックを引き起こしているような状況を解決する唯一の方法は、根気よく話しかけるのみ。
「畏れながら国王陛下に申し上げます。一気に何もかも覚えようとすると、却って頭が混乱し、せっかく覚えた事柄も忽ち忘れてしまいます。
焦らなくても良いのです。覚えようとする、その気持ちこそが一番大事なのですから」
ルイの前に跪き、一言ずつ丁寧に語り掛けるアラミスの眸は穏やかそのもの。
国王陛下にお仕えするという大義名分とは別に、まだ歳若い国王を取り巻く様々な状況や思惑から、何としてでも守らねばならぬという意識が、彼をそうさせていた。
きっとまだ遊びたい盛りだろうに、一国の国王としての振舞いを要求されなければならぬ事情を知っているが故に、アラミスを初めとする三銃士は真の忠誠を心に誓っているのだった。
「余は難しい話は好きではない。しかし、国民が皆、幸せに暮らせるようになれるのであれば、余は頑張るぞ!だから、ハラミ!これからも色々な事を少しずつでいいから、余に教えてください」
言い切ったルイの眸の気高さに、アラミスはしばし言葉を放つのも忘れて、見入っていた。
そしてその言葉の奥深くに込められた気持ちに触れて、アラミスの心も俄かに沸き立つ。
「かしこまりました、陛下!アラミス、陛下がお望みとあらば、
いつでも陛下のお役に立てるよう、すぐに馳せ参じる所存です!」
「頼りにしてるよ、ハラミッ!・・・さて、勉強はこれ位にして、昨日の続きをしようっと♪」
さっきまでの小難しい顔とは打って変わって、歳相応の無邪気な笑顔が浮かぶ。
その満面の笑顔を見つめながら、アラミスは強く思うのだった。
国王陛下には、あまりくよくよ悩まれず大らかな気持ちで、このまま育っていただきたいものだ。
陛下にはまだまだ未知数の可能性が秘められている筈。
その無限の可能性を引き出すためにも、我々がしなくてはならぬ事はただ一つ。
陛下の成長を妨げようとする数々の思惑から、身を挺して陛下の命と思いを守らねばならぬのだと。
アラミスの脳裏に枢機卿の不敵な笑みが浮かぶ。
このまま、枢機卿の好き勝手にさせてはならない。
思わず握り締めた拳に力が入る。
かつてない程に強い覚悟を秘めたアラミスを後押しするかのように、王宮に射し込む光は眩い煌きを一面に放つのだった。
ルンルンとスキップをしながらご機嫌な様子で部屋を出て行こうとしたルイがふと立ち止まる。
何かを思い出したように、「あ!」と一声上げると、物凄い勢いでアラミスの元に駆け寄り、彼の袖口を強く引っ張り上げながら、大きな素振りで話し掛け始めた。
「ねぇねぇハラミ!勉強を教えてくれた御礼にいいこと教えてあげる!実は今日、王妃から花束をプレゼントされちゃったんだ!王妃が余の為に自分で選び取って、王宮の庭から取ってきてくれたんだ!だからハラミも帰るときに王宮から好きなだけお花を取っていってもいいよ!」
満面の笑みで話しかけるルイに対し、アラミスは戸惑いを隠せない。
王妃が実はルイを結果的に欺くような形でバッキンガム公爵と密会していた事実。
そしてそれを容認するかのように、自分たちが彼らの護衛に関わっていた現実。
ルイが無邪気に王妃を恋い慕う分だけ、その事実の残酷性が露にされていくようでアラミスはしばし言葉を失った。
そしてそんな状況にも関わらず、王妃を一心に慕うルイが哀れでならない。
「いえ、私は・・・」
様々な状況を慮って、口篭るしかないアラミスに対し、ルイはさも嬉しそうに話を続ける。
「遠慮するのは良くないぞ、ハラミ!余はとっても嬉しいのだ」
あまりにも純粋過ぎる眸の眩しさに、アラミスは抗う術を失った。
こんなにも一途に王妃を慕うルイの純情に接し、自分たちがとってきた行動は全てルイの気持ちに反するものであった事に、今更ながら強い後悔が押し寄せる。
大人の狡さで、あの時はああするしかなかったという言い訳すら霞んでしまうようなルイの想いに接し、これ以上ルイを欺き続けるのは良心の呵責に耐え切れなくなりそうで。
しかし、その想いを必死に思い留まらせているのは、全てがルイの為を思ってのこと、それだけに尽きた。
「・・・・・・私ごときがお花をいただいていってもよろしいのでしょうか?」
胸の内の凄まじい葛藤を押し殺して紡ぎだす言葉が掠れる。
こちらの思惑に気付かず、ルイはニコニコしながら答えるのだった。
「もちろん!ハラミが持っていきたいだけ、持っていけばいいよ!余が許す」
「かしこまりました。では遠慮なくいただいていきます」
アラミスの言葉を聞き終えぬうちに、ルイは軽やかなスキップを繰り出しながら再び去っていくのだった。
遠ざかっていく小さい背中を見つめながら、アラミスは小さな溜息を一つ零した。
見事に手入れが行き届いた王宮の庭に足を踏み入れると、日頃の喧騒を一気に忘れさせるような別世界が目の前に広がっていた。
「陛下はああ仰って下さったが・・・・・・さて、どうしたものか」
ポルトスならこういった機会に恵まれたら、それこそ諸手を挙げて大はしゃぎで庭園中を駆けずり回りながら、そこら中の花を片っ端から摘み取っていくのだろうが、花とは無縁の生活を送っていた自分にはどうしたらいいのか皆目見当が付かない。
このまま何もせずに立ち去ろうとした矢先、自分の名を呼ぶ声に気付いた。
「そこにいるのは銃士隊のアラミスではないですか?」
僅かだが剣を含んだ言い回しには、かつて聞き覚えがあった。
「アンヌ王妃。ご機嫌麗しく何よりでございます」
即座にその場に跪き、深々と一礼するアラミスに対し、王妃はいつものごとくマイペースを貫き通す。
「およそ花とは無縁の生活を送っているであろう貴方が、こんな所にいるとはね。珍しいこともあったものだわ」
あっけらかんと言い放つ王妃に、おそらく悪意は無い。
悪意はないが、ストレートに物事を口にする分だけ、相手の気持ちには無頓着なのだろう。
怒るのを通り越して、若干諦めにも似た境地でアラミスは大人の対応で答える。
「私のような者がこの庭に足を踏み入れ、美しい景観を損ねてしまうのであれば即刻立ち去りますゆえ、平に御容赦願います」
一切感情を込めぬまま機械的に繰り出した言葉に対し、アンヌもまた牽制球を投げるのであった。
眼に見えない火花がバチバチと音を立てている感覚が二人の間で沸き起こる。
「逃げるのですか?アラミス!貴方、よっぽど私の事がお嫌いなのね?いえ、随分と前から貴方の態度で薄々気付いてはいましたが」
振り返りざまにカウンターパンチをお見舞いされたような衝撃がアラミスを襲う。
しかしその猛攻に必死に耐え抜いたアラミスもまた、王妃に対し失礼がない程度にジャブを繰り出すのも忘れない。
「どう思われても結構ですが、国王陛下の為に貴女様をお守りする義務が我々にはあります。ただ、陛下のお気持ちを哀しませるような事は慎んでいただきたいと切に願うばかりです」
丁寧な口調に込められた静かな怒りの炎が勢いを増す。
あっさりと言い放つ分だけ、怒りの深さは計り知れない。
「トレヴィルも全く同じ事を私に言い放ちました。長い期間同胞として同じ任務に就いていると、どうやら上の者の考え方が下の者に多大な影響を及ぼすらしいわね。その考え方、貴方方の代で終わりになさい!」
威厳を込め言い放つアンヌに対し、アラミスは一礼したまま強烈な捨て台詞を吐く
「王妃自らそう仰るのは、余程ご自分が引き起こした騒動について深く反省していらっしゃるのだとお見受けしました。今、私に向け放たれた言葉は御自身の首を絞めかねない事も充分承知で仰られた筈。アラミス、お言葉を胸に深く留めました故、どうぞご安心ください。ではこれにて失礼致します」
立ち上がり掛けたアラミスに対し、意外とも思える王妃の言葉が届いた。
「・・・・・さすが陛下をお守りする精鋭銃士隊筆頭の知恵者の言葉だわ。わたくしの負けです。・・・・・アラミス、貴方にひとついい事を教えてあげましょう。コンスタンスはリラとミモザの花が大好きなのよ。わたくしが許すから好きなだけ持っていきなさい。ただし一つだけ約束していただきたい事があるの。わたくしが貴方にコンスタンスの好きな花を教えたことは、絶対に秘密にしてちょうだい」
さっきまでの威圧的な口調とは打って変わり、潔く負けを認めてサバサバした言葉を漏らすアンヌの目元が綻ぶ。
まるで移り変わりの激しい山の天気のような、アンヌ王妃の気持ちの変わり様にアラミスは戸惑いを覚えながらも、感謝の念を表すのだった。
「御配慮感謝申し上げます。・・・・・・しかし、何故コンスタンスに言ってはならぬのですか?」
名立たる策士とは言えども、そのあまりに天然過ぎるアラミスの恋心の自覚の無さに王妃は思わず小さな笑いを漏らす。
「さて、どうしてかしら?御自分の胸に手を当ててよく考えてみたらいかが?」
含みのある言葉を投げ付けながら、王妃は艶やかな立ち居振る舞いでその場から立ち去るのだった。
庭園に残されたアラミスはただひとり、その言葉の意味の真意を紐解こうとフル回転して挑むのであったが、結局答えは見つからずじまいだった。
「ただいま戻りました」
聞き覚えのある優しい声が耳に入った瞬間、コンスタンスは料理をする手を一旦止めて一目散に声の主の元へと駆け寄る。
胸の高まりが急に激しくなるのを押さえ切れそうにない。
「おかえりなさいませ、アラミスさん!」
息を弾ませながら自分の事を出迎えに来たコンスタンスに、アラミスの顔もまた綻ぶ。
「お出迎えありがとう、コンスタンス。・・・・・・実は今日、貴女にプレゼントがあるのです」
そう言いながらずっと後ろ手に抱え込んでいたリラとミモザの花束を、
そっとコンスタンスの目の前に差し出す。
「いつも我々の為に、色々とお気遣いしていただき感謝の念に堪えません!ほんのささやかな気持ちですが、よろしかったら受け取っていただけないだろうか?」
「!・・・・・これを・・・・・・私に?」
「当然です!貴女以外に誰にプレゼントしようとするのです?」
アラミスの言葉を聞き終えないうちに、コンスタンスの眸から大きな雫がポタポタと零れだし始めて、可憐な花弁を濡らす。
その様子を見ていたアラミスは突然泣き出したコンスタンスの姿を見て、
激しく狼狽する。
「もしかして、貴女のお気に触るようなことをしてしまいましたか?
だとしたら申し訳ない!すぐさまこの花束を戻してきます!」
慌てふためいて、立ち去ろうとするアラミスをコンスタンスは必死に押し留める。
「違うんです、アラミスさん!誤解しないでっっっ!私とっても嬉しくて泣いてしまったんです。本当に嬉しいから涙が止まらなくて」
言いながらも後から後から涙を零し続けるコンスタンスに、アラミスの天然ボケが炸裂する。
見事なボケの極致は、アトスやポルトスが聞いたらその場で失神してしまいかねないレベルの凄まじさであった。
「私には分からない。お花をもらっただけで、女性はこんなにも嬉しがるものなのですか?帰って来る途中で何度も見掛けましたが、そこらじゅうに咲き綻んでいる、ありきたりの花ですよ?」
この言葉をポルトスが聞いていたとしたら、即座に殴りかかっても可笑しくない位の爆発的な破壊力であった。
真面目一辺倒の男が織り成す天然ボケは、ある意味彼の真骨頂とも言えた。
惚れ惚れする位の美形で、男からも嫉妬されかねない艶やかで洗練された立ち居振る舞い。
教養と知性を併せ持ち、尚且つ理性的で奥床しい語り口は、世の男性全員が逆立ちしても追いつけないほど、他の追随を許さずにいた。
その男がよりによって、恋愛面に関して凄まじい天然ボケを次々と繰り出すとは神の悪戯にしか思えない程であった。
「アラミスさんの目にはきっとそう映るのでしょう。でも私にとって、このお花たちは何よりも大切なものなのです」
「何故そんなに嬉しがるのですか?私にはさっぱり分からない」
腕組みをして、小難しい表情を浮かべながら一心不乱に考え込むアラミスを見ているうちにコンスタンスの心も次第に落ち着きを取り戻していく。
匂い立つようなリラとミモザの花束に囲まれながら、コンスタンスは極上の笑みを
浮かべつつアラミスに語りかけるのだった。
「このお花達は、私がとっても好きなお花なんです。・・・・・・そして私にそれをプレゼントして下さったのが、他の誰でもないアラミスさんだって事が・・・・・・一番嬉しかったんです」
まるで可憐な妖精がこの場に舞い降りて、コンスタンスに乗り移ったかのような清らかで愛らしい表情を認めた途端、アラミスの心に鋭い衝撃が走った。
息が詰まって呼吸できなくなるような感覚が身体を襲い、激しい胸の高鳴りが抑えきれなくなりそうで。
「ありがとう、アラミスさん。私、今日の事・・・・・・一生忘れません」
コンスタンスの呟きが、何故か胸を離れないアラミスなのであった。
***後日、ほんの戯れに、リラとミモザの花言葉をポルトスからこっそりと聞き出したアラミスは胸の高鳴りが更に抑えきれなくなるのだった***
リラ:「愛の芽生え」「初恋」
ミモザ:「秘めた恋」「プラトニックな愛」
花言葉の意味はkababonさんに教えて頂きました。
ありがとうございました!
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