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クローバーの独り言

新.三.銃.士の感想とかお話もどきを気儘に書き綴ってます。 Copyright ? 2010- Koufuu Biyori All rights reserved.

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第11話~13話頃 三銃士&タニアン

お話というよりも、会話もどきの短編です。
なんとなくこんな感じが思い浮かびました。

よろしかったらどうぞ

「だぁ~~~、もうっ!!!あの鼻っ柱の強さがとにかく気にいらねぇ~~!!!」

テーブルを叩く手に怒りが滲む。
しかしその言葉とは裏腹に、目元に宿った小さな優しさが彼の本音を現していた。

「物にあたるとはあまり感心しないけどね」

声の主の方を見向きもせずにさらっと言い放つ男は、荒れ狂う男の剣幕に
たじろぎもせず淡々と本を読み耽るだけ。
その落ち着き払った冷静な態度は、見事としか言いようがない。

「まあまぁ、そう怒んなさんなって!血圧上がると、美味しい酒も不味くなるっての!そもそもお前の若い頃にそっくりじゃん、あの坊やは」

まるで意に介さないように、あっけらかんと言い放つ男の物言いに対して
反論の口火が切られた。

「アイツのどこが俺の若い頃にそっくりなんだよッ!全然似てねぇだろうがッ」

コップに注いでいた酒瓶をやおら掴むと、口をつけて一気飲みし始める男を制することなく、反対に煽るようにして言葉を載せる恰幅のいい男は向かうところ敵無し。

「そういう所がまんまお前にそっくりじゃん!人のいう事をまともに聞かないで、自分で一気に結論付けようとするところ!やっぱ似てるわ、お前と坊やは」

皿にのっていた分厚いチーズを一切れ摘むと美味しそうに頬張り始めた男の胸倉を掴んで喚く男の声がヒートアップしていく。

「悪いけどなぁ、ポルトス!俺はあんなに単純馬鹿な奴じゃねぇぞ。分かっているとは思うがなッ!!」

口角泡を飛ばして鼻先で怒鳴りまくる男を冷たい瞳で見据えた男がポツリと一言漏らす。
無機質な言葉が下宿部屋を沈黙の時間へと瞬く間に突き落とした。

「・・・酒臭ぇんだよ、おっさん」

一気に形勢逆転。
痛い所を衝かれて、反撃の仕様が無くなったアトスの肩先ががっくりと落ちる。
ワナワナと震えながらポルトスの胸倉を掴んでいた指先を離すと、アトスはテーブルに突っ伏して悔しさを滲ませた。
震える肩先に何故か男の哀愁が宿る。

「・・・言い過ぎた?俺」

アラミスに真意を問おうとするが、アラミスもまた彼のスタンスを貫き通す。

「全然。いつも通りだね」

表情を変えずにページを捲る指先が一旦止まり、ポルトスに意味ありげな視線を投げ掛けるアラミス。
仕方ねぇなぁといった風情で肩を竦めながら、口に残っていたチーズの欠片を噛み砕きながらポルトスはふ~っと一呼吸した。
まさに阿吽の呼吸といった感じで、アイコンタクトを取り合いながら状況改善に努めようとする男が二人。

「ま、タニヤンがお前に似てるってことは、あの坊やもそれだけ見込みがあるって事だよ。な、アトス!」

突っ伏してるアトスの肩を軽くポンポンと叩いて言葉を漏らすポルトスだが、岩のように強固な佇まいで一切を拒否しているようなアトスには届かず。
しかしそれはもう織り込み済みで次の一手を繰り出すポルトスに加え、アラミスも援護に乗り出す。

「隊長も言ってたぜ!タニヤンが今、一番心を許しているのは、アトスだって!俺らはまだ、その域には到底達してないらしい」

「私に対してもポルトスに対しても、彼はまだどうやら遠慮があるらしい。君に対してダルタニアンが食って掛かるのは、自分を認めてほしいという気持ちの裏返しなのだろう」

穏やかに紡がれていく言葉に、頑なだったアトスの心も次第に解き解されていく。
しかしその言葉を素直に受け容れるほど、彼の性格は素直ではなく。

「・・・お前等、俺の事を持ち上げて面白いか?」

融和しそうに思えた心を、一気に険悪な雰囲気へと傾けさせたアトスに突然降り注いだ声が部屋の空気を一新した。

「アトスさんッ!剣術の稽古付けてくださいッ!」

晴れやかな声と共に姿を現した少年にポルトスとアラミスは安堵の溜息を漏らした。
だが、そんなに易々とその流れに乗ろうとはしないアトスのささやかなプライドが必死に抵抗する。

「俺はお前の剣術の稽古に付き合うほど、暇じゃねぇ!」

言いながら手元にあった酒瓶を再び持ち直そうとするアトスの手を制する影が一つ。

「いつまでも酒に逃げてるのは、らしくないんじゃないですか?僕は貴方の本当の強さを見てみたいんです。しっかりとこの目で!」

力強い声に込められた響きが時間を止めた。
ハッとして振り向く男三人の目に映ったものは、ベルトランと同じ輝きを宿した真っ直ぐな眸。
その一途な直向さは、当の昔に忘れ去った己が心と同じ輝きを持って三人の心に訴えかける。

「・・・アトス。これは君の負けのようだね」

口元に小さい笑みを浮かべるアラミスの眸はいつになく穏やか。

「ここまで言われて引き下がるようなアトスじゃないよな~♪」

ウキウキした口調で話すポルトスに満面の笑みが零れる。

「ったく、どいつもこいつも食えねぇ奴らばかりだぜ、相変わらず」

渋々と椅子から立ち上がるアトスは照れ隠しに大きな咳払いを一つ零すと、ダルタニアンに背中を向けながら大きな声で吐き散らした。

「いいか!今日はとことんしごいてやるから、覚えておけ!すぐに音を上げるんじゃねぇぞ。分かったな?」

「ハイッ!」

意気揚々と連れ立って部屋を出て行く二人の様子を見ながら、ポルトスとアラミスのやり取りは続く。

「ったく、どこまで似てるんだか」

頭を掻き毟りながら、ボソッと冗談混じりに毒を零すポルトスにアラミスの強烈な嫌味もどきが炸裂する。

「その口振りは少し嫉妬が混じっているとお見受けしたが」

「・・・お前もさぁ、いい加減その言いっぷり直さない?」

表情を変えずしれっと言い放つ年下の銃士に軽くジャブを放つ。

「仕方ない。こういう風に来てしまったのだから、今更直すのも面倒でね」

「アトス以上に頑固だろ、お前」

「なんだ、今頃気付いたのかい?ポルトス」

「俺もよく、こんな奴ら二人と長年付き合ってこれたよ。自分で自分を褒めてやりてぇ」

「では私からは感謝状を贈るとしよう」

その見事な切り返しに堪らずプッと噴き出したポルトスにアラミスもつられて、小さく小さく笑う。
いつまでもこんな穏やかな時間が続けばいいと願わずにおれない二人だった。

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