クローバーの独り言
新.三.銃.士の感想とかお話もどきを気儘に書き綴ってます。 Copyright ? 2010- Koufuu Biyori All rights reserved.
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★最終回以降 アンヌ&コンスタンス
最終回以降のアンヌ王妃とコンスタンスのお話です。
相変わらず王妃がゴーイングマイウェイを貫き通しております(笑)
よろしかったらどうぞ。
★Web Clapありがとうございます!★
相変わらず王妃がゴーイングマイウェイを貫き通しております(笑)
よろしかったらどうぞ。
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「・・・貴女がいない間、アラミスが毎日修道院での貴女の様子を私に伝えに来てくれたのよ」
明るい光が射し込む王妃の部屋に一瞬翳りが生じる。
王妃のカップに注ぎいれていた紅茶に動揺が雑じった。
琥珀色の波が小波立ち、王妃のティーカップに映りこんでいた私の顔が大きく歪む。
それはまるで泣いているような感じで、私の眸に映った。
「理性的なようでいても、本当の気持ちまでは隠せないのね。
『バッキンガム公爵に惹かれている私の事を嫌っているのでしょ?』といきなり問い質したら、
顔を背けて黙り込んでしまったわ」
王妃のさばさばした言い方に、アラミス様への悪意は込められていない。
むしろ社交辞令な言い方を敬遠し、本音を貫こうとされるが故に周囲との軋轢が表面化しているだけで。
欺瞞が渦巻くこの王宮で、自分らしくありたいと願うのは至難の業かもしれなかった。
それでも己の生き方を貫き通そうとするアンヌ王妃に、私はいつしか憧れを抱いていたのかもしれない。
「・・・でも、あの男は私が本音をぶつけても怯むことなく、次の日もまた次の日も毎日欠かさず
貴女の事を私に報告しに来たのよ。普通、そこまで心を見透かされたら、怖気づいて王宮に
近寄りたくなくなる事でしょう。しかし、あの男は違った。たとえ私から嫌味な言葉を投げ掛けられようとも毅然とした態度で職務を全うした」
その光景がありありと目に浮かぶ。
王妃の部屋で、深く頭を下げながら淡々と報告をするアラミス様の姿が。
その光景を思い描いた時、胸がグッと締め付けられる感覚が私を襲った。
アラミス様・・・
私のアラミス様への想いを知ってか、知らずか、王妃は尚もその状況を言葉に載せる。
注ぎいれたままの紅茶から沸き立つ湯気の向こうで、アラミス様の穏やかな笑顔が私を見つめているような気がした。
「一度戯れに訊いたのよ、アラミスに。『何故貴方は嫌っている私の元へ、毎日報告に来るのですか?本当なら顔も逢わせたくないでしょうに。無理をしなくてもよろしい』と」
高らかに言い放つ王妃の顔がその時だけ、ほんの小さく揺れたような気がした。
その言葉を受け止めたアラミス様の気持ちも勿論の事、その言葉を言い放たねばならなかった
王妃の苦悩も分かって、胸が苦しくなる。
きっと言わねばならない王妃も相当苦しかったのだと。
顔を合わせることでさえ嫌なら、面会を断ればいい筈。
でもそこまでして言わずにおれなかったのは・・・。
「そう突っ撥ねた私にあの男はこう言い放ったのよ。『誰よりも王妃の心配をしているコンスタンスのたっての願いですから、私はその約束を守り通します。たとえ王妃からどれほど毛嫌いされようとも』。・・・あの時のあの男の蒼く澄み切った眸の色を一生忘れることはないでしょう」
「・・・!」
言葉が出ない。
全身から迸っていく感情の欠片が、透明な雫となって部屋の隅々まで弾け飛んでいく。
身体が小刻みに震えだし、その場に立ち竦んだまま動けない私を王妃から放たれた言葉が優しく包み込んでいく。
「あの男は・・・コンスタンス、貴女の為だけにそこまでして私の元へと毎日通い続けたのです。貴女と交わした約束を守る、ただそれだけの為に・・・」
昇り立つ湯気が次第に小さくなっていく。
冷め掛けた紅茶を啜りながら、ポツリと漏らした王妃の顔に今まで見たことがない位穏やかで優しい笑みが浮かぶ。
「貴女の事をそれほどまでに想ってくれる男です。たとえ今、お互いの心を見失っていても、気持ちは何処かで必ず繋がっている筈。・・・アラミスの事、大切になさい。・・・わたくしが言いたいのはそれだけ」
傾きかけた陽射しが時の訪れを告げる。
部屋を満たす金色の光のベールは、抱え切れぬほどの想いに彩られて静かに揺れるのだった。
明るい光が射し込む王妃の部屋に一瞬翳りが生じる。
王妃のカップに注ぎいれていた紅茶に動揺が雑じった。
琥珀色の波が小波立ち、王妃のティーカップに映りこんでいた私の顔が大きく歪む。
それはまるで泣いているような感じで、私の眸に映った。
「理性的なようでいても、本当の気持ちまでは隠せないのね。
『バッキンガム公爵に惹かれている私の事を嫌っているのでしょ?』といきなり問い質したら、
顔を背けて黙り込んでしまったわ」
王妃のさばさばした言い方に、アラミス様への悪意は込められていない。
むしろ社交辞令な言い方を敬遠し、本音を貫こうとされるが故に周囲との軋轢が表面化しているだけで。
欺瞞が渦巻くこの王宮で、自分らしくありたいと願うのは至難の業かもしれなかった。
それでも己の生き方を貫き通そうとするアンヌ王妃に、私はいつしか憧れを抱いていたのかもしれない。
「・・・でも、あの男は私が本音をぶつけても怯むことなく、次の日もまた次の日も毎日欠かさず
貴女の事を私に報告しに来たのよ。普通、そこまで心を見透かされたら、怖気づいて王宮に
近寄りたくなくなる事でしょう。しかし、あの男は違った。たとえ私から嫌味な言葉を投げ掛けられようとも毅然とした態度で職務を全うした」
その光景がありありと目に浮かぶ。
王妃の部屋で、深く頭を下げながら淡々と報告をするアラミス様の姿が。
その光景を思い描いた時、胸がグッと締め付けられる感覚が私を襲った。
アラミス様・・・
私のアラミス様への想いを知ってか、知らずか、王妃は尚もその状況を言葉に載せる。
注ぎいれたままの紅茶から沸き立つ湯気の向こうで、アラミス様の穏やかな笑顔が私を見つめているような気がした。
「一度戯れに訊いたのよ、アラミスに。『何故貴方は嫌っている私の元へ、毎日報告に来るのですか?本当なら顔も逢わせたくないでしょうに。無理をしなくてもよろしい』と」
高らかに言い放つ王妃の顔がその時だけ、ほんの小さく揺れたような気がした。
その言葉を受け止めたアラミス様の気持ちも勿論の事、その言葉を言い放たねばならなかった
王妃の苦悩も分かって、胸が苦しくなる。
きっと言わねばならない王妃も相当苦しかったのだと。
顔を合わせることでさえ嫌なら、面会を断ればいい筈。
でもそこまでして言わずにおれなかったのは・・・。
「そう突っ撥ねた私にあの男はこう言い放ったのよ。『誰よりも王妃の心配をしているコンスタンスのたっての願いですから、私はその約束を守り通します。たとえ王妃からどれほど毛嫌いされようとも』。・・・あの時のあの男の蒼く澄み切った眸の色を一生忘れることはないでしょう」
「・・・!」
言葉が出ない。
全身から迸っていく感情の欠片が、透明な雫となって部屋の隅々まで弾け飛んでいく。
身体が小刻みに震えだし、その場に立ち竦んだまま動けない私を王妃から放たれた言葉が優しく包み込んでいく。
「あの男は・・・コンスタンス、貴女の為だけにそこまでして私の元へと毎日通い続けたのです。貴女と交わした約束を守る、ただそれだけの為に・・・」
昇り立つ湯気が次第に小さくなっていく。
冷め掛けた紅茶を啜りながら、ポツリと漏らした王妃の顔に今まで見たことがない位穏やかで優しい笑みが浮かぶ。
「貴女の事をそれほどまでに想ってくれる男です。たとえ今、お互いの心を見失っていても、気持ちは何処かで必ず繋がっている筈。・・・アラミスの事、大切になさい。・・・わたくしが言いたいのはそれだけ」
傾きかけた陽射しが時の訪れを告げる。
部屋を満たす金色の光のベールは、抱え切れぬほどの想いに彩られて静かに揺れるのだった。
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