クローバーの独り言
新.三.銃.士の感想とかお話もどきを気儘に書き綴ってます。 Copyright ? 2010- Koufuu Biyori All rights reserved.
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願い
聖書の講義を引き受けるきっかけとなった展開を
曲解して書いてみました。
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いつも励みになっております。
それは決して同情や哀れみの心から発したものではなく、
彼女の張り詰めた心を、ほんの僅かでも解きほぐす事が出来るのなら・・・・・
ただ、それだけを願う私だった。
*****
いつものように銃士隊の見回りを終え、下宿先の階段を上り終える途中、
ふと見上げた先の光景が眸に入った途端、微かに震えた心。
何時如何なるときでも心乱さず、平常心を保つよう、常に己を律し続けてきた誓いが
その瞬間だけゆらりと揺らいだ。
過去に遭遇してきた数々の場面に、相当の免疫は出来ていると自負していたつもりだったが
この心の揺らぎは想定外で。
「お前さんはさぁ、理屈で物事を考えがちなんだよ。たまには自分の心に
正直になってみるのも悪くはないぜ、青年よ!」
酔った勢いに紛れて、茶化して言い放ったポルトスの表情が脳裏に浮かぶ。
あの時、彼の目は笑っていなかった事だけが、記憶の片隅に鮮明に残っていた。
何故か急にその出来事を思い出さずにおれなかったのは、
この光景がじわりと自分の心に響いていたからだとは、その時は知る由も無く。
時間が立ち止まったままの空間で、私はその光景に心も身体も釘付けになっていた。
柔らかな光が差し込む窓辺に佇み、両手を窓から少しだけ差し出す彼女の周りを
小鳥達が取り囲み、囀りを繰り返す。
警戒心の強い小鳥達が、臆することなく彼女を慕い、次々に近寄ってくる情景は
まるで絵画の一場面を見ているようで。
天上から零れ落ちる光の洗礼を浴びながら、
生きとし生けるもの全てに慈しみの微笑を投げかける彼女に、聖母マリアの面影が重なる。
それはまるで、宗教画から抜け出したような清らかで美しい存在のまま、私の眸に焼き付いた。
・・・・・・その時だった。
突然、彼女の眸から一筋の泪が零れ落ちた。
緩やかな時間の波を切り裂いて落ちる泪は、透明な雫の中に抱えきれない哀しみを
抱きながら、ポタリと床を濡らす。
「・・・・・・小鳥さん、貴方達はこのままずっと自由に生きるのよ」
か細い声が澄み切った空の蒼に溶ける。
耳に彼女の切実な響きが届いたと同時に、私の身体を貫いた一閃の感情。
小さく、鋭い衝撃は瞬く間に身体を摺り抜けたが、心の奥深くにほんの僅かな痕跡を残していたとは
気付かずにいる私だった。
私達の前では決して弱音を漏らさず、涙など流さないと想っていた気丈で聡明な彼女の、
思い掛けない一面に遭遇した瞬間、心の中で生じた想い。
張り詰めた彼女の心を、少しでも解きほぐしてあげる事が出来るのなら、私は・・・・・
*****
数日後、彼女から聖書の講義を受けたいとの申し出に、
二つ返事で答える私だった。