クローバーの独り言
新.三.銃.士の感想とかお話もどきを気儘に書き綴ってます。 Copyright ? 2010- Koufuu Biyori All rights reserved.
[163] [162] [161] [160] [159] [158] [157] [156] [155] [154] [153]
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
躊躇いの向こう側 21~23話頃
なんとなく本編でこんなやり取りがあったのかもしれないな~?という妄想です。
自分の気持を自覚した瞬間、もしかしたら先生に対してコンスはこんな感じの想いが過ぎったんではなかろうかと。
超短編ですが、よろしかったらどうぞ。
自分の気持を自覚した瞬間、もしかしたら先生に対してコンスはこんな感じの想いが過ぎったんではなかろうかと。
超短編ですが、よろしかったらどうぞ。
それは単調な生活に訪れた、束の間の心安らぐひととき。
私が本当の私でいられる大切な時間。
交わす会話に込められた温もりが、胸の奥深くにするりと染み透っていく。
掛けられる言葉には穏やかな優しさが紛れ込み、日常に追い立てられる私の心をさり気なく癒してくれる。
私の生活の領域に踏み込む気配すら一切見せぬまま、貴方は淡々と講義を続けていく。
――きっと貴方は分かっていて、黙っていらっしゃるのでしょう。
私の境遇の断片を知っているが故に、敢えて踏み込まずにいるのだと。
何かのきっかけで心の歯止めが効かなくなってしまったら、
私はきっと貴方に対して、想いのうちをぶちまけてしまうかもしれない。
ずっと諦観せねばならなかった想いを貴方の前で曝け出してしまう怖れが、今の私にはある。
そう想わずにいられないほど、貴方と一緒に過ごす講義の時間は、私にとって本当に大切なひとときだから。
そして今日もまた、あっという間にこの楽しい時間は過ぎていって・・・・・・
「今日はここまでにしましょう。ではまた明日」
約束の時間きっかりに講義を終えると、素っ気無くその場を立ち去ろうとする貴方の背中を見た瞬間、
堪えていた想いが堰を切って溢れ出ていくのを止められない。
「あの・・・・・・!」
意識を経由せず放たれた言葉が宙を漂う。
貴方をここに留まらせる為の正当な理由もなしに呼び止めた声が微かに上擦る。
私の声を受け止め、振り向いた貴方の顔に少し訝しんだ表情が浮かぶ。
その表情を見た瞬間、心臓から全身に鋭い痛みが放たれ、私を襲った。
――貴方がそんな表情を浮かべるのは無理もない。
だって私は貴方が憂慮している事態を、自らが招き入れようとしているのだから。
貴方が私から距離を置く理由を知っていて、それでも貴方を踏み込ませようとしているのだから。
――貴方から嫌われてもいい。
軽侮されていもいい。
距離を置かれてもいい。
どうか・・・・・・どうか一つだけ、私の願いを叶えてほしい。
貴方と過ごす時間の中で、本当に大切な物を見つけた私のささやかな願いを。
乾いた口の中で行き先を見失っていた言葉が、今ようやく解き放たれていく。
貴方に向けて。一直線に。
戸惑いを振り払い、躊躇いを捨てた言葉に重なり合っていく気持。
それはやっと見つけ出した、安らぎという名の心の拠り所。
そしてそれを齎してくれる、貴方との大切な時間。
「もしよろしければ・・・・・・何か一冊本を貸していただけませんか?」
語尾が震えて、空気中を微かな波動が波打つ。
言葉に出すと同時に小刻みに震え始めた身体。
凍結した時間の中で身動き取れない感覚が私を襲う。
抜け殻のようになったまま立ち尽くす私を見る貴方の眸に、一瞬だけ煌いた光。
その鮮明な閃光は、研ぎ澄まされた想いで滲んでいるようで。
「貴女が読みたいと思うのであれば、私に遠慮せずにお好きなだけどうぞ。
本は二階の下宿部屋から断りなくお持ちいただいて結構です。では私はこれで」
立ち止まった時間を切り崩していく穏やかな声。
その声の源となる貴方の顔には、優しさで彩られた笑顔が浮かぶ。
「あ・・・・・・ありがとうございます!」
今はただ、それだけ言うのが精一杯で。
よもや叶えられると思わなかった願いが成就した喜びで、身体が埋め尽くされる。
深くお辞儀をしたまま、伏せた顔の影で睫を濡らす一滴の泪。
胸の奥に痞えた想いが、熱い感動を伴って全身を駆け巡っては身体の隅々まで生き返らせてくれるようで。
遠ざかっていく足音を聞きながら、失い掛けていた心の潤いが再びゆっくりと満ちていくのを実感する私だった。
私が本当の私でいられる大切な時間。
交わす会話に込められた温もりが、胸の奥深くにするりと染み透っていく。
掛けられる言葉には穏やかな優しさが紛れ込み、日常に追い立てられる私の心をさり気なく癒してくれる。
私の生活の領域に踏み込む気配すら一切見せぬまま、貴方は淡々と講義を続けていく。
――きっと貴方は分かっていて、黙っていらっしゃるのでしょう。
私の境遇の断片を知っているが故に、敢えて踏み込まずにいるのだと。
何かのきっかけで心の歯止めが効かなくなってしまったら、
私はきっと貴方に対して、想いのうちをぶちまけてしまうかもしれない。
ずっと諦観せねばならなかった想いを貴方の前で曝け出してしまう怖れが、今の私にはある。
そう想わずにいられないほど、貴方と一緒に過ごす講義の時間は、私にとって本当に大切なひとときだから。
そして今日もまた、あっという間にこの楽しい時間は過ぎていって・・・・・・
「今日はここまでにしましょう。ではまた明日」
約束の時間きっかりに講義を終えると、素っ気無くその場を立ち去ろうとする貴方の背中を見た瞬間、
堪えていた想いが堰を切って溢れ出ていくのを止められない。
「あの・・・・・・!」
意識を経由せず放たれた言葉が宙を漂う。
貴方をここに留まらせる為の正当な理由もなしに呼び止めた声が微かに上擦る。
私の声を受け止め、振り向いた貴方の顔に少し訝しんだ表情が浮かぶ。
その表情を見た瞬間、心臓から全身に鋭い痛みが放たれ、私を襲った。
――貴方がそんな表情を浮かべるのは無理もない。
だって私は貴方が憂慮している事態を、自らが招き入れようとしているのだから。
貴方が私から距離を置く理由を知っていて、それでも貴方を踏み込ませようとしているのだから。
――貴方から嫌われてもいい。
軽侮されていもいい。
距離を置かれてもいい。
どうか・・・・・・どうか一つだけ、私の願いを叶えてほしい。
貴方と過ごす時間の中で、本当に大切な物を見つけた私のささやかな願いを。
乾いた口の中で行き先を見失っていた言葉が、今ようやく解き放たれていく。
貴方に向けて。一直線に。
戸惑いを振り払い、躊躇いを捨てた言葉に重なり合っていく気持。
それはやっと見つけ出した、安らぎという名の心の拠り所。
そしてそれを齎してくれる、貴方との大切な時間。
「もしよろしければ・・・・・・何か一冊本を貸していただけませんか?」
語尾が震えて、空気中を微かな波動が波打つ。
言葉に出すと同時に小刻みに震え始めた身体。
凍結した時間の中で身動き取れない感覚が私を襲う。
抜け殻のようになったまま立ち尽くす私を見る貴方の眸に、一瞬だけ煌いた光。
その鮮明な閃光は、研ぎ澄まされた想いで滲んでいるようで。
「貴女が読みたいと思うのであれば、私に遠慮せずにお好きなだけどうぞ。
本は二階の下宿部屋から断りなくお持ちいただいて結構です。では私はこれで」
立ち止まった時間を切り崩していく穏やかな声。
その声の源となる貴方の顔には、優しさで彩られた笑顔が浮かぶ。
「あ・・・・・・ありがとうございます!」
今はただ、それだけ言うのが精一杯で。
よもや叶えられると思わなかった願いが成就した喜びで、身体が埋め尽くされる。
深くお辞儀をしたまま、伏せた顔の影で睫を濡らす一滴の泪。
胸の奥に痞えた想いが、熱い感動を伴って全身を駆け巡っては身体の隅々まで生き返らせてくれるようで。
遠ざかっていく足音を聞きながら、失い掛けていた心の潤いが再びゆっくりと満ちていくのを実感する私だった。
PR