クローバーの独り言
新.三.銃.士の感想とかお話もどきを気儘に書き綴ってます。 Copyright ? 2010- Koufuu Biyori All rights reserved.
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リフレイン ~第12話頃~
アラミスとコンスタンスが徐々に親密になっていく過程に悶えてます(笑)
第12話頃のお話を書きました。
よろしかったらどうぞ。
「今日の講義は、ここまでにしましょう」
「ありがとうございました。とても楽しかったです」
満足そうに頷きながら、立ち上がろうとする貴方を見て、思わず口走った言葉。
「もしよろしかったら、お茶をご一緒にいかがですか?」
お茶にお誘いしたのは聖書を教えて下さっているという、感謝の気持ちの現れであるのは勿論の事、
それ以外に無意識の心の発動が私を駆り立てていた。
突然の申し出に対し、貴方は少し困惑の表情を浮かべながら、言葉を紡ぎ出した。
「・・・・・・お誘いありがとう。しかし、ご主人の許可をいただかなくても、よろしいのですか?」
真っ先に私の状況を察して配慮してくださる心遣いに、胸が苦しくなる。
心配してくださる気持ちはとても嬉しいはずなのに、その反面、胸を覆っていく複雑な気持ち。
・・・・・・以前はこんな気持ちなど抱かなかったのに。
「ありがとうございます。主人は今、仕事に出掛けているので、すぐには戻って来ませんから」
言葉が沈みがちになってしまうのを止められない。
僅かな揺らめきが言葉の端々に滲んでいるのを、貴方は知ってしまったのだろうか?
「わかりました。では、お言葉に甘えて少しだけいただきます」
貴方の声が耳に届いた瞬間、心が僅かに浮足立つのを止められない私だった。
「すぐにご用意いたしますね!」
小走りでキッチンに向かう私の気持ちは、いつになく弾んでいた。
「・・・・・・アンヌ王妃は貴女を大分信頼なさっているようですね」
その言葉にハッと胸を突かれた瞬間、二杯目の紅茶をカップに注ぎ入れていた手が震えた。
カップの中で大きな小波が起こる。
それはまるで、今の私の心境そのものを現しているようで。
「・・・・・そんな事はありません。現にこうしてお暇をもらっておりますし・・・・・」
若干掠れた声が喉元を過ぎたとき、ちくりとした棘が胸を刺し、小さな傷跡から零れ落ちる血が
徐々に広がっていく感覚が私を襲う。
「本当にそうだろうか?アンヌ王妃は誰かの差し金で、貴方にお暇を与えたのでは?」
冷静な声とともに、私を見つめる貴方の眸が心を射抜く。
研ぎ澄まされた眸の色は、人間の真実を見据えるような鋭さを持ちながらも、
落ち着いた優しさが隠れていた。
「私の事を買い被り過ぎですわ、アラミスさん。元は私は王妃の仮縫いをしていただけの人間ですから」
貴方の顔を見ていられなくて、ふと瞼を伏せる私に、貴方はそっと話し掛ける。
「いずれ王妃も気付かれることでしょう。誰が自分にとって一番信頼に足る人間なのかを。
・・・・・・ご馳走様。随分と長居をしてしまいましたね。紅茶、美味しくいただきました。
・・・・・・では、また明日」
すっと席を立ち、二階に向け二三歩踏み出す貴方の背中を見つめる私に、
僅かに後ろを振り返った貴方の言葉が届く。
「元気をお出しなさい。・・・・・・貴方には笑顔が一番似合いますよ」
「!」
遠ざかっていく背中を見ながら、貴方がくれた言葉が何度も何度も頭の中で響き続ける。
柔らかな声に隠された、貴方のさりげない優しさが散りばめられた言葉に触れて、
思わず涙が零れ落ちる私だった。